1973年のピンボール (講談社文庫) 価格: 420円 レビュー評価:4.0 レビュー数:30 村上春樹の2作目は、いいきなもんである。文庫本で171ページの間に、「煙草」が61回出てくる。語り手である主人公も鼠もスペイン語の大学講師も実によく煙草を吸う。JT(ジェームズ・テイラーではない)のまわしもんか!? それから、「まるで・・・のように」という直喩が26回も使われる。うんざりだ。そして「うんざり」という言葉が6回発せられる。「それだけだ」が9回。決定的なのは、小説を書く上で35の誤謬があるが、そのうちの32が見つかるのである。たとえば、p.25に「これは『僕』の話であるとともに鼠と呼ばれる男の話でもある。」とあるが、p.28にも「これはピンボールについての小説である。」とある。作 |
羊をめぐる冒険〈上〉 (講談社文庫) 価格: 500円 レビュー評価:4.0 レビュー数:24 良い作品です。文章も良いし、構成的にもバランスが取れていて、破綻していない。
最後まで読みきれば、透明な悲しみで満たされます。
村上さんの作品の中では、上位のものと思います。 |
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新世紀のビッグブラザーへ 価格: 1,365円 レビュー評価:5.0 レビュー数:21 純粋に近未来を描いたSF小説、ちょっと怖い読み物としても、面白い。ぐんぐん吸い込まれるように惹きつける筆力は新鮮だった。
昨今の情勢を見ていると、是非、こういうテーマこそ、アニメや映画、漫画化して、広く若い世代にあらゆる手段で伝えていってほしいという気持ちに駆りたてられた。
連日の極悪な「偽善・仕分けショー」、伝統文化ジェノサイド、国の元気に関わるスポーツ振興予算削減、スーパーコンピュータ開発費の締結などを見せつけられると、怒りが湧いてくる。と、同時に、それ以上に恐ろしい「偽善パフォーマンス」を徹底して演じる「良心勢力」的なコメンテータ、特に福島瑞穂が図 |
ダンス・ダンス・ダンス〈下〉 (講談社文庫) 価格: 680円 レビュー評価:4.5 レビュー数:15 1:ビジネス書として。
上巻の最初の部分にプロフェッショナリズムに
基づく仕事の方法論が簡潔に述べられている。
2:世代論として。
1940年前後生まれの牧村、1950年前後生まれの「僕」と
五反田君、1960年前後生まれのユミヨシさん、1970年前後生まれの
ユキ。アメは恐らく1945年前後生まれだろう。戦後日本人の精神史を
横列配置した群像劇とも読める。
3:時代小説風ファンタジーとして。
1983年3月から数ヶ月間が舞台だが、発行は1988年の秋。
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ダンス・ダンス・ダンス〈上〉 (講談社文庫) 価格: 680円 レビュー評価:4.5 レビュー数:25 僕は80年代の幾つかの作品を読んで、そのひたすら感傷的なところ(=例、主人公がヤマ場でやたら泣くこと等)が鼻について長い間、春樹作品を放ったらかしにしてきた。春樹作品の読書を再開したのはここ2年程だが、そんなライト層の感想を以下に記します。
この作品の主人公が感じる「世界」は、イメージによる死者とのコミュニケーションが可能な場所と現実の世界の二つがある。この二つを繋いでいるのが自我の深層意識に居る「羊」であり、自我と死の世界の行ったり来たりを登場人物達は行っていくストーリーとなっている。こう書くと暗い話のようだが、ポップなリズムが読者を飽きさせないし、ほのかに明 |
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キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション) 価格: 924円 レビュー評価: 4.0 レビュー数:230 1951年に『ライ麦畑でつかまえて』で登場してからというもの、ホールデン・コールフィールドは「反抗的な若者」の代名詞となってきた。ホールデン少年の物語は、彼が16歳のときにプレップ・スクールを放校された直後の生活を描き出したものだが、そのスラングに満ちた語り口は今日でも鋭い切れ味をもっており、ゆえにこの小説が今なお禁書リストに名を連ねることにもつながっている。物語は次の一節で語りだされる。 ――もし君が本当に僕の話を聞きたいんだったら、おそらく君が最初に知りたいのは、僕がどこで生まれただとか、しみったれた幼年時代がどんなものだったかとか、僕が生まれる前に両親はどんな仕事をしていたかなんて |